D-GHOST は“人事に強いデザイン会社”として、2021年の2月8日に設立し、今年3周年を迎えました。そんな節目のタイミングで、D-GHOSTはこれまでの企業ロゴをリニューアルしました。新しいロゴを手掛けたのは、代表の稲妻とも親交の深い1TARO GRAPHICS代表の鈴木一太郎さん。そこで今回、リニューアルに込めた想いやロゴのアイディアについてD-GHOST代表の稲妻と1TARO GRAPHICS代表の鈴木一太郎さんに対談していただきました。着想から提案、納品までのプロセスをはじめ、同業のクリエイターとして活躍する二人が大切にしていることとは…。1. 3周年をきっかけにロゴをリニューアルーーロゴのリニューアルにはD-GHOSTのどんな想いがあったのでしょうか。D-GHOST・稲妻大樹(以下、稲妻):まずは会社を3年継続した時がターニングポイントになると思っていたので、このタイミングでロゴのリニューアルをしたいと考えていました。実際に3年が経ったいま、たくさんの機会に恵まれ、仲間もお客様も増えて、改めて会社の在り方を考える時期に入ったと感じています。D-GHOSTをどうやって世の中の役に立つチームにしていくか…。そこで、 “人事に強いデザイン会社”という単一的な側面だけでなく、“国内外のデザイン案件を積極的に手掛ける日本のクリエイティブチーム”というクリエイター集団として、チームやユニットのような集合体にシフトしていきたいと考えました。会社にとって大事なこのタイミングで、改めて自分たちの象徴でもあるロゴも再定義したいと考え、一太郎さんに相談しました。1TARO GRAPHICS・鈴木一太郎(以下、一太郎):相談をもらって嬉しい反面、元々稲妻さんとは知り合いで同業者ということもあり、少し緊張もしましたが、リニューアルに向けて明確な理由と想いを伝えてもらったので精一杯担当させてもらいました。ーーちなみに、元々のロゴはどのようにデザインしたんですか?稲妻:実は、創業時のロゴは僕が片手間で手っ取り早く作った程度のものでした。(↓創業時のロゴ)とは言ってもちゃんと考えはあって。まず、D-GHOSTの頭文字の「D」。これは僕が学生時代からお世話になった会社である「DRAFT」の頭文字を元々使いたいなと思っていて、社長に直接ご挨拶に行き「一文字ください!」とお願いして快諾いただきました。加えて、「D」には数学で変化量を表す記号として使われているギリシャ文字の「Δδ(デルタ)」という意味もこめていて、そのことからロゴマークのモチーフは三角形にしました。お客様のビジネスに変化をもたらすような仕事をしていきたいという想いを込めてデザインしたんです。一太郎:当時のロゴも洗礼されていて素敵でしたよね。ロゴとしてちゃんと成立していたので、そこからどうやってイメージを膨らませて変えていくかが課題でした。なかなか大変な仕事になりそうだなと思いましたが、やりがいがあるなと楽しみになりました。稲妻:創業当時からお付き合いのあるクライアントさんの中には、「え、変えちゃうんですか?」「覚えやすかったのに」と言ってくださる方もいたりして。それはそれで嬉しくて躊躇する気持ちもほんの少しあったんですが、最終的にはやはり「自分たちの存在意義を再定義しよう」という考えが勝ってリニューアルを決断しました。2. 方向性の再確認とアイデンティティの確立ーーリニューアルにあたり、どんなロゴにしたいか具体的なイメージはありましたか?稲妻:リニューアルするうえで、ロゴにはさまざまな解釈をもたせたいと思っていました。要は、誰にでも同じように見える・解釈できるロゴではなく、異なる見え方でいい。でも、突き詰めると大事にしたいところは同じだよねって。D-GHOSTという会社のアイデンティティを改めてロゴにもたせることで、チームとして大切にしたい価値観や軸足のようなものを確立する一方で、受け取り手には自由な解釈をしてもらい、共感できる人とたちと繋がっていけるようなロゴになったらいいなと。一太郎:最初のミーティングで、稲妻さんがD-GHOSTの「GHOST=黒子」というお話をしてくれました。お客様にとってD-GHOSTという会社がどんな存在でありたいかを明確に提示してくれたので助かりました。「GHOST=黒子」だけでなく、ロゴマークを起点に、「これはなんだろう?」といった議論や対話が生まれるようなものを作りたいと言われたことが印象的でした。稲妻:僕の想いを汲み取ったうえで、真面目なものから遊びのあるものまで、いくつも案を出してくれましたね。3. 真面目なものから遊びをいれたデザインまでーー実際に提案されたロゴデザインについて教えてください。一太郎:一回目のプレゼンで5案ほど提示しました。A案は「透明なロゴ」です。ゴースト=おばけは見えるか見えないかわからない存在だから、あえて“見えない”をデザインとして表現してみました。半透明な「D」の文字が集合体となって、大きな「D」とり、背景やサイズが変わることでロゴが見えてくる半透明なデザインになっています。企業としても活用しやすいデザインではないかと思います。稲妻:最初のA案はかなりしっくりきて、すごく気に入っていたんです。僕が上手く言語化できていない部分を表現してくれているなって。一太郎:最初に真面目なものを提示して安心してもらいたかったので、狙い通りの反応でしたね(笑)。でも、僕の中ではもっと遊びのあるものもいいかなと思っていて。具体的な何かを比喩で表現したいと思って制作したのがコップをモチーフにしたB案です。これは家で仕事をしている時に、机の上にあるコップを見て「いいかも!」って直感的に思ったんです。コップって、水が入っていたら「その水、取って」って言いますよね。でもビールが入っていたら「ビール」って呼ぶ。コップは中に何かが入ることで、自らを変化させる。でも、常に100%の仕事をしてくれる。それが稲妻さんから聞いたD-GHOSTのイメージとマッチして、コップをモチーフにしたデザインを考案しました。A案とは違って、日常の風景から着想したこともあり、かなりポップなイメージでしたね。稲妻:コップのアイディアは、「人によって解釈は変わるけど、最終的に着地するところは同じ」という、僕のイメージにぴったりはまりました。コップから着想するなんて僕の引き出しにはまったくなかったし、ものすごく気に入ってしまいました。でも、この段階では当然なんですけど、誰がどう見てもコップそのものだったんですよね(笑)。なのでロゴマークとして会社名が入らなくてもD-GHOSTだとわかるくらい印象的なデザインにしたいと伝えて、B案をブラッシュアップしてもらいました。4. 解釈は自由でいい。目的地は同じ。ーー稲妻さんからのフィードバックを受けて、一太郎さんはどのように考えましたか?一太郎:僕自身もコップの案を気に入っていたので、稲妻さんに選んでもらえたら嬉しいなと思っていたんです。フィードバックをもらってから、コップを抽象化する作業に入りました。もしも、コップが欠けていたらDに見える?壁から出てきたらゴーストみたい?みたいな感じで制作していきました。最終的に、欠けたコップをモチーフにしたデザインにたどり着きました。稲妻:壁から出てくるという表現はすごく面白くて好きでしたね。たとえ国や立場や役割が違っても、すべてを越えて、すり抜けていく、みたいな印象を受けました。強引さもなく力技でもなく、自然にスッと入っていくような表現がD-GHOSTの目指している方向性に近くてとても気に入りました。一太郎:そんなふうに解釈してもらえて嬉しいです。実は最初に思いついたときは「壁から出てくるコップっておばけみたいだな」くらいのイメージだったんですが、稲妻さんがそこからイメージをポジティブに膨らませてくれて、僕自身も「たしかに」と思えたんですよね。対話を通じてどんどんイメージができていったので、今日もまた新しいアイディアが沸いてきちゃいそうです(笑)5. 真逆の提案から近づけるアプローチーー最終的に今回のロゴに着地したプロセスを振り返ってみてどう思いますか?一太郎:今回のD-GHOSTのロゴではガラッとイメージを変えたものが採用されましたが、普段の仕事ではそうじゃない場合もあります。今回のようにデザインをいくつか提案してみても、結果的に少ししか変わらない姿で収まった時は、あまり変えたくなかったんだなって印象を受けます。でも、それはそれでまったく問題ないんですよね。例えば、大手企業の親しみのあるパッケージであれば、少しだけデザインを変えたり、年代毎に徐々に変化させていくパターンもあるので、変えるといってもいろんなやり方があると思います。ロゴは会社や商品の顔であり、特にBtoCのビジネスだと売上にも大きな影響を与えます。お客様からどう見られたいか?どんな印象を持たせたいか?今はどう思われているのか?など、様々な角度と長期的な目線で考えることが大事なので、目先の議論で拙速に変えるというのも違うかなと。稲妻:余談になるんですけど、大砲を撃つ時にどうやって効率よく照準を合わせるか?という話があって。答えとしては、外れた地点から少しずつずらして合わせていくよりも、まず最初に外した地点の反対側に大きく外してから調整していくと効率がいい。僕はデザインの提案もそれに似ていると思っていて。最終的な答えに到達するためには、最初に真逆の180度ずらした極端な提案をしてみることで、本当に大事にしたいものが見えてくる。D-GHOSTのロゴでも、一太郎さんが振り切った提案をしてくれたことで自分の思考がクリアになり、最終的にいいところに着地できたなと思っています。おかげで自分にはない視点に気づけたことが本当に良かったです。一太郎:たしかに180度振り切ってみて、気に入ってもらえたらその方向性でいいし、違う場合は戻ればいいですもんね。でも、振り切った提案をする時は結構緊張するんです。振り切りすぎて相手の心が掴めなくなくなったらどうしようって。だからこそ、どちらのアイディアも用意して、お客様の思考や想いにきちんと向き合ってコミュニケーションをすることが大事だなと思いますね。6. 実体験を活かしてお客様に届けられるものーー稲妻さんの想いが具現化された素敵なロゴになりましたね。完成したロゴに対する想いや考えを教えてください。稲妻:最終的に採用したこのロゴには、今回のリニューアルの過程で議論した結果が集約されていて、僕たちは主役ではなく、お客様にとって役に立つ黒子であり、裏方でありたいという想いが込められていると感じます。その想いに共感してもらえる人が集まって、一緒に仕事をしたい時にチームを組めたらいい。そんな想いを体現できたロゴになったと思います。ロゴをリニューアルするというプロジェクトは、結果的にたくさんの気づきがあり、改めて会社の方向性を考えるきっかけにもなりました。とてもいい経験になったからこそ、今度は僕らがお客様にその体験を提供していきたいと改めて思えました。「デザイン」というと表層的な見栄えのことをイメージされがちですが、僕たちのデザインの仕事はクライアントさんの問題解決に貢献することと、解決までのプロセスを共に体験していただくことです。同業であり同志でもある一太郎さんと仕事ができたことで、この想いを改めて実感しました。一太郎:稲妻さんの言う通り、僕もデザイナーとして大事にしているものに改めて気づくきっかけになりましたね。この経験を今後も仕事に役立てたいと思います。ーー今回の経験を踏まえてクライアントさんに向けたアドバイスをするとしたら?稲妻:実際にクライアントさんから、リブランディングのタイミングでロゴを変えたほうがいいのか?とか、いつ変えるのがいいのか?といった相談を受けることがあります。ロゴを変えたからといって必ずしも良い方向に進むわけではないので、簡単に変えたほうがいいとは言い切れないし、お金をかけたから良いものになるとも限らない。それよりもむしろロゴを変える以前に、全然違うところに本当の課題があることの方が多いので、僕からはあまり「べき論」で語ることがなかったんですよね。でも今回、実際にロゴを変えてみたことで、自分たちが大切にしている価値観やアイデンティティを再確認して、それを共有し合い、コミュニケーションの軸となるものを作ることが大事だと改めて実感できました。その切り口においてはクライアントさんにも意義を伝えやすくなったと思います。一太郎さんはどう思いますか?一太郎:いま使っているロゴに込められた想いを再確認して、社内で価値観を見直すことが重要だと思います。変えたいと思うなら変えたらいい。もしも、いまのロゴを気に入っているのであれば、無理に変えずにそのままだっていい。悩んでいるなら、悩みの原因となっている本質的な課題を探して見直す作業が大事です。ロゴに限らず、パッケージデザインを変える時でも、何故変えたいのかを明確にしていかないと上手くいかないですからね。7. “なぜロゴを変えたいのか” 悩みの本質に迫ることで生まれる熱量ーー「ロゴを変えたい」「ブランディングを強化したい」という場合、企業の経営者や担当者が気をつけることはありますか。稲妻:まず、ロゴを変えたいと思っている時は、自分たちの会社がお客様や市場、社内のメンバー同士など、ステークホルダーと向き合うなかでなにかしらの認識のギャップを感じていたり、コミュニケーションのミスが起きていることが多いです。いまの状況が理想と異なっていたり、不安に思っていたり…。なにかもどかしい気持ちを抱えている時は、ロゴが自分たちの象徴として本当に正しかったのか、疑問に感じることもあると思います。もしも、ひっかかる部分があるなら、再確認をするためにも、変えたいという想いを大事にしたほうがいいと思います。一太郎:僕も実際の作り手として、今回の稲妻さんの依頼からそういった想いを感じたので、少なくとも1つはイメージをガラッと変えるものを絶対に提案したいと思いました。D-GHOSTの元のロゴが洗練されたものだったので、近いものを作っても印象は変わらないし、意味がないかなと思って。稲妻:どんな仕事でも共通することだと思いますが、「やらなきゃいけない」ではなく、「やりたい」という想いと意思がなによりも大事です。作り手にとってはその熱量が何よりのエネルギーになるし、クライアントと作り手が「一緒に課題に向き合ってつくり上げていく」というスタンスでいることがプロジェクト成功への何よりの近道だと思っています。そして心の底から「やりたい」と思うには、やはり問題意識の深掘り・根本的な悩みのタネを突き止めることが大事。僕たちとしてはその段階から伴走できるデザイナーであり続けたいと思っています。8. 余談:なぜ生成AIでロゴを作らなかったの?ーー最後に興味本位の質問なんですが、生成AIでロゴを作ろうとは考えなかったんですか?稲妻:当然考えました。ロゴマークの「形」だけを求めるなら、コストも時間もかからないAIという選択肢もあった。実際に、いくつか自分でも作ってみてはいたんです。でも、僕はただ形が欲しかったのではなく、自分たちのアイデンティティを整理したかったんですよね。AIは僕が言語化できる範囲でしか整理できなかったり、想定外のアウトプットをなかなか出してくれなかったりと、ちょっと違うなって。僕は誰かに想いを伝えた時に、どういう解釈の広がり方をするのか。そして、最終的にどこに着地するのか。そのプロセスを楽しみたかった。そう考えた時に、「一太郎さんと一緒に作りたいな」と思ったんです。一太郎:AIはアシスタントとしてはものすごく優秀ですからね。でも、AIと仕事しても終わった後に打ち上げには行けないんですよね(笑)。稲妻:たしかに(笑)。一太郎さんと何度もディスカッションを重ねたことで、自分が言語化できていなかったところの気づきがたくさんあったし、アウトプットへの熱量を感じられたことが自分たちの議論や意思決定に大きく影響したと感じます。この点こそAIではなく一太郎さんと一緒に仕事ができて本当によかった点だと思っています。何より楽しかったので、納期や制限がなかったらいつまでも続けてしまいそうですね。一太郎:デザイナーって、リクエストがあればどこまででもアイディアを出してしまうので、それこそ「一太郎AI」になってしまいそうです…(笑)。僕も今回の依頼を通して、僕ひとりだったらコップで終わらせていたかもしれないデザインに、Dの要素を入れて模索したり、形が変わっていく過程は新鮮な感覚でした。自分で予想した着地点よりも少し違ったものができたので僕も楽しかったです。稲妻:やはり相手が人間だろうとAIだろうと、仕事をするうえで一番大切なことはコミュニケーションです。ロゴをリニューアルするにあたって、ただ綺麗なものやかっこいいものを作りたかったのではなく、会社やチームのアイデンティティを再定義することが最重要テーマでした。今回、僕は一太郎さんに相談したことで、このテーマをクリアできたので本当によかったと思っています。D-GHOSTらしさを大切に、これからの軸になるような想いのこもった新しいロゴを作ってもらえて、とてもいいプロジェクトになりました。ーーありがとうございました。お二人が楽しそうにプロジェクトを遂行された様子が印象的でした。デザインに携わるクリエイターさんや、ロゴのリニューアルを検討されている企業の皆様に参考にしていただけたら幸いです。(取材・文/加納 沙樹, 写真/矢野 拓実)私たち D-GHOST は、特に人事領域の課題解決を基軸とした、Webデザインや動画制作、プレゼンテーションデザインなどのクリエイティブ制作を得意としている「人事に強いデザイン会社」です。業務における課題の調査・マーケティングリサーチ・戦略設計などの上流工程から、Webサイト、動画、各種コンテンツ、研修プログラム、プレゼンテーション資料などの立案・設計・制作まで、一連のプロジェクトに対応できます。人事関連で課題をお持ちの方や、コーポレートサイト・採用サイト・動画などの制作でお困りの方は、私たちにお気軽にご相談ください。D-GHOSTの特長D-GHOSTのサービスお問い合わせ資料ダウンロード